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五郎治殿御始末 (中公文庫)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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| 人気ランキング: | 14923 位
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引きずってきた過去との折り合いに苦しむ男たちの物語
明治維新後の激しく転変する世の中にあって、引きずってきた過去との折り合いの付け方に苦しむ男たちを描いた六つの短編集。“泣かせの”浅田節ではないが、時代背景を最大限利用しながら、ほろっと来させつつも爽やかな読後感を持たせるという、著者ならではの熟練の技である。いつもながら文章も巧いし。
武家政治の時代から四民平等の世へと急激に移っていった維新直後のこの時期。政治・行政の仕組みが激変したのは無論のこと、服装、髪型、暦、時間の観念、通貨等、暮らしの絶対的な基準と見なされていた様々なものが、わずかな間に目まぐるしく急変した。こうした環境の下で生きていると一体どの様な感覚に襲われるのだろうかと、本書を読み終えてふと思いを巡らせた次第。
曾祖父は戊辰戦争のただなかに生まれたことになる
明治維新によって、武士の世が終わりあたらしい世の中に。
今まで信じてきたものととってかわったものをどうやって受け止めたら良いか戸惑い、受け入れようとする葛藤を、武士階級だった人たちの目線でやさしく描いた短編集です。
最後の短編は作者の曾祖父をモデルに描いたもの。
自分が曾祖父のひざの上にいて、話を聞いているといった設定で
「わしはおまえの年頃に、いちど死に損なった。」と語ったその体験を書いています。
武士としての矜持と現実の生活の擦り合わせそこにうまれる悲喜こもごも
に涙さそわれました。
とても面白い短編集です。
浅田劇場が本作でも堪能出来ます。
「鉄道員」をはじめ本当に短編小説と言う分野を丹念に熱心に書き続ける作家。
本作は、江戸から明治、髷から散切り頭へ移り行く中での侍の姿を中心に描いている。
付録として付けられている「御一新前後 江戸東京鳥瞰絵図(今尾恵介)」が、
本作を読みながら、あるいは読み終えた時に有り難い。私自身は東京で生まれ育ったものの、
都内の古い地名が今の風景と中々マッチしてこない。
桜田門と彦根の藩邸との距離感なんて説明されても頭の中で配置しきれない。
そんな私には有り難かった!
そして、浅田作品に私は毎回泣かされてしまう。飛行機の中で映画化された「地下鉄に乗って」を観ていた時も、
泣いていたし、本作でも何度か実際の地下鉄の中で何度かホロリと来ていて気恥ずかしい思いをしていた。
本作の更に罪作りな事は、解説にまで泣かされた事だ。磯田道史氏の解説は、歴史学の視点から
実に見事に表題作を中心とした解説、浅田イズムの解説をされている。ここで、最後の涙だった。
久々、楽しませて頂きました!
出色
最近の浅田モノでは出色の短編集。
去り行く侍の時代に抗う「武士」の矜持。
「西向く侍」は名作。
是非、人目の無い場所で読まれることを。
武士の時代の終焉
800年續いた武士の時代が終焉を迎へた明治維新。
徳川15代將軍慶喜が大政奉還して政治形態が變はり、スムーズに新しい世の中になつたやうな印象がある。
もちろん、鳥羽伏見から五稜郭に至る舊幕府勢力の抵抗はあつたが、人の生活レベルでの變化に附いてはイメージ出來ていなかつた。
淺田次郎は、6つの短篇で、この間の變化を武士の視點から描いてみせた。
かつての武士たちは、御一新の後、どのやうに生きていつたのか。
商人になつた者、官僚になつた者、軍人になつた者、俥曳きになつた者・・・
それぞれの人生に於て、かつての武士としての生涯はどのやうに投影されてゐるのか。
いずれも趣のある作品だが、なかでも印象に殘つたのは、「遠い砲聲」と表題作「五郎治殿御始末」。
「遠い砲聲」の主人公は、近衞砲兵隊の中隊長として勤めながら、かつての主君に仕へてゐる。
西洋時計の使ひ方になかなか慣れられずに苦勞し、演習では大失態を演じてしまふ。
それでも周圍の彼に對する姿勢は暖かい。
軍人はいづれももと武士であり、かつての主君に仕へる彼の生き樣に好意的なのだ。
そして主君は、彼に對して何もしてやれない自分を情けなく思つてゐる。
最後の花火のシーンは壓卷だ。
武士の心意氣が傳はつてくる。
「五郎治殿御始末」は、武士としての身の始末のつけかたを描いたもの。
孫の養育と家の存續に心を碎いた老武士が選擇した道は・・・
すつきりと背筋の通つた生き方をしてきた人は、周圍がその生きざまを見てゐるものだ。
西南の役をもつて、武士の時代は名實ともに終はつた。
これまで知らなかつたこと。
御三家のひとつ尾張家はいち早く薩長の側についてゐたといふこと。
そして、その當主は會津中將、桑名越中守と實の兄弟だつたといふこと。
つまり、尾張大納言は、血をわけた兄弟である二人と鬪つたわけだ。
幕府側からすれば、武士の風上にも置けぬ裏切り者といふことになる。
もともと尾張は將軍家とは仲が惡かつたとはいへ、よもや、といふ感じがした。
中央公論新社
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